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キラキラ

第35章 屋烏之愛


一人二種目出場という決まりを無視で、この縦割りリレーのみ、了承したという松本。

出会ってから、走ったところなんて見たことないけど……


「わぁ……!!」

「すっげ!あの人も速ぇー!」


クラスメートの歓声が遠くに聞こえる。

俺は、トラックを走る松本を目で追う。

彪のようなしなやかな姿。
相葉といい、松本といい、どうしてこんなに走る姿が美しいのだろう。

松本は目の前を走る敵のチームを次々と追い抜いて行く。

応援席は、そんな松本への歓声で極限までヒートアップしてる。


「いけー!二年の人ー!!」

「あと一人ー!」


トラック四分の三行ったところで、トップを走るクラスに並んだ。

組んだ指に力がこもる。
俺は松本を凝視したまま、ひたすら祈った。


三年にバトンが渡る直前。


松本がトップに躍り出たのをみた。


「すげー!!すげー!」


応援席はお祭り騒ぎだ。


「二年、めちゃめちゃ速くね?!」

「あのひと二宮の恋人だろ!?すげーな!」


…………!


どさくさ紛れに、でかい声ですごいことを言われて、顔が真っ赤になるのを自覚する。

もはや、今までの噂を自ら裏付けてしまった恋人問題は、公然の事実となったようだ。
でも、クラスメートたちはみんな笑顔で、からかってやろうなんて想いは微塵もなさそうで……。


「……うん」


俺は、照れ臭いのを我慢しながら……小さく頷いた。



二年でトップになった紫チームは、そのあとの三年の走者が残念ながら奮わず。
一方で、菊池と大野が、スーパー速い走りで見事な追い上げをみせ、この種目優勝は青チームがかっさらっていった。

ちなみに、大野の走る姿もめちゃくちゃカッコよかったけど。
松本に言ったら機嫌が悪くなりそうだから黙っておこう。

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