テキストサイズ

キラキラ

第35章 屋烏之愛


結果。

俺は意外な才能を発揮し、最後まで勝ち残った。

動体視力に秀でていたのか、ハチマキをとりにくる敵の騎馬の手を全て避け、意外に俊敏な動きで逆に相手のハチマキをとりまくる。

最初は、俺と組まされたのが気に入らないのか、あまりやる気のみえなかった馬役のクラスメートも、俺があまりに勝ち続けるからか、しまいにはヒートアップしてきて、グランド内を走り回り、崩されて待機場所にもどった連中も、歓声をあげはじめた。


「二宮ー!!後ろだ!後ろ!!」

「左からくんぞ!避けろ!!、」


俺は無我夢中だった。

最後には隣のクラスとの大将との一騎討ち。
俺より頭ひとつぶん高い敵の大将は、当然リーチも長い。

上から被さるように奪いにくるのを、馬のやつらのファインプレーですんでの差で避ける。
そうして、すかさず懐に潜り込んだタイミングで、俺は一気に手を伸ばした。


カズ!!!


松本の声が聞こえた気がした。


爪の先がハチマキにかかり、手首をひねってもぎとる。


一瞬しんとなったグランドは、次の瞬間、おおーっという地鳴りのような歓声に包まれた。

それは、どうみても小柄で細い俺が、でかい騎馬に勝った称賛の声に違いなくて。

はぁ……はぁ……と、息を弾ませながらクラスメートをみやると、みんな飛び上がって喜んでる。


良かった……


と、二年生の席をチラリとみると、一番後ろで仁王立ちしてる松本と目があった。
松本は、親指を立てて、笑ってる。
俺は、うん、と頷いてみせた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ