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キラキラ

第35章 屋烏之愛


「おまえ、今大野のことカッコいいって思ったろ?」

「…………思ってません」

「嘘つけ」

「思ってません」

「すこーし思ったろ」

「………………すこーしだけ」


言ったら、こら、と、ヘッドロックされて、俺はくすくす笑った。

「……ああいう風に、櫻井さんを自分のだと宣言できる強さがカッコいいと思いました」

「……そうか。そうだな」

松本は、イタズラっぽく笑って、そのまま俺の肩を抱き寄せる。


「…………」


視線を感じて顔をあげたら、熱っぽい瞳で俺を見つめる松本の瞳をみつけ、ドキリとする。

そのままゆっくり傾いてくる顔を、震えながら少し唇を開いて……受け入れた。

数えるほどしかしたことのない松本とのキス。

重なった唇は、今日は思いの外カサカサしてた。
……でもとても熱かった。



ガヤガヤしてきた校舎を気にしつつ、急いで昼御飯を食おうと、俺らは裏庭に向かった。


「昼からカズは何にでんの」

「騎馬戦です」

「台……のわけねーか。上か?」

「それどころか……大将です」

「…………マジ?」

「小さいからだって」


苦笑いする俺の頭を、松本はポンポンとたたいて。


「……頑張れよ。ケガすんじゃねーぞ」


優しい言葉をかけてくれる。
クラスのやつらの嫌がらせだと思っていたポジションも、松本にこんな形で心配してもらえるなら、それも悪くない、と、思った。

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