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キラキラ

第35章 屋烏之愛

那須は、もともと松本たちと仲が悪いわけではなかったという。

ヤンキー丸出しの松本らに、優等生の那須は、なんの壁もなく接してきていて、そんな彼にこちらもそれほど距離をもったわけではなかったらしい。


「むしろ、普通に笑いあってたんだ」

「……そうですか……」


芝に座って、ポツポツと、昔話を始めた松本に、俺は神妙に頷く。


ところが、那須が上級生である櫻井に一目惚れをする。
どうしても想いを伝えたいから、協力してほしいと。
松本らに言ってきたあたりからおかしくなったという。


「……櫻井以外何も見えてなかった感じだった」

「……」


もちろん、松本たちに、協力などというそんなお膳立てなんてできるわけもない。
だが、まぁ、せいぜい頑張れ、というスタンスで見守るくらいのことはできる、と思い、様子を見ていたら。


「去年の体育大会の日にこっぴどく振られてさ。挙げ句ショックのあまり転校……って意味わかんねーだろ」

「…………」

「気持ちが弱いんだよ……そんで、とどめがこれだろ。あいつ何してんだって話だ」


松本は、やるせなさそうに呟いた。
その顔はかつての友を許すことができない状態になった今を、悔しく思う表情にもみえた。


「まぁ……櫻井はもう人のものだと分かれば、このさき諦めもつくだろ」

「……そうですね」

「しかも、あの大野だし」

「……お似合いですよね」

「そうだな……無敵だな、もう」


那須を前に、啖呵を切った大野。

今思うと……ちょっとかっこよかった。


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