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キラキラ

第35章 屋烏之愛


授業中の校舎はとても静かだ。

教師の喋る声が時々響くだけの廊下に、俺の校内履きの音が妙に響く。

この状況で誰かに見つかったら、相当厄介だ。
授業サボって何やってんだって話だ。

早々に姿をかくさなくちゃならない俺は、いつになく素早い動きで、廊下を小走りで駆け抜けた。

でも、途中、自分の姿が周りにどう見えてるのかなんとなく気になり……目についたトイレに飛び込んだ。



勢いよく水をだし、手を洗い、ついでに顔も洗った。
ぶるぶるっと頭をふり、水滴を飛ばす。

そうしておそるおそる鏡に映る自分を見る。


「……やっば……これ」


ボタンのとれたポロシャツの襟もと。
目立つ位置の首筋にしっかりくっきり赤黒い痕がついてる。
色が白いから余計に目立つ。


「…………」


ポタポタ前髪からおちる水滴をかきあげて、思わず水でそこをぬぐった。


気持ち悪い……


やつらの唾液がついてるかもと思うだけでおぞましい。
そのうちに、そうだ、と思い、俺は爪をたてて何度もそこをひっかいた。

新たな傷でそこが隠れたらいいと思った。

水でビショビショになりながら、狂ったようにそこを洗ったりひっかいたりして、痕跡を消そうと必死になっていると。


「…………!」


右手を誰かにつかまれて、はっとして顔をあげた。

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