
キラキラ
第35章 屋烏之愛
「とりあえず、傷さえかくれりゃいいか。菊池、絆創膏」
言いながら、櫻井が俺のひじをとった。
俺はどんな顔をしたらよいのかわからずに、三人の顔を見れぬままうつむいた。
櫻井が俺の腕を凝視してるのが分かり、なんだか、緊張する。
「イタそ。大丈夫か?これ」
呟いた櫻井に、ダイジョウブです、と小さく返す。
……松本たちの会話からもたまにでてくる、大野グループが、今目の前にいる。
俺がいままでこの人たちに出会ったこともなかったのは、松本たちがあえて避けていたためだろう。
さらに、学年も違うし、おそらくこの人たちのたまり場は屋上だ。
会おうと思わなければ、顔をあわせることもないのはあたりまえだった。
故に自分のなかで、勝手につくりあげていたイメージは、ものすごい冷酷集団だった。
だけど、目の前の人たちからは、そんな感じがなくて戸惑う。
「こいつに使うんだったの?俺、てっきり智か翔が怪我でもしたのかと思って急いできたのに」
なーんだ……というように菊池がぼやいた。
「まぁ……そういうなよ。人助けだと思ってさ」
大野のゆったりとした声音に、ゆるゆると顔をあげたら、彼は、優しい顔をして俺をみていた。
その表情だけみてたら、普通ののんびりしたただの三年の先輩。
絡まれていたときの冷徹な雰囲気など、微塵も感じなかった。
