
キラキラ
第35章 屋烏之愛
「翔くん、絆創膏とか持ってない?」
「……俺はさすがに。ああ、でも、菊池なら持ってるかも。……なんで?まさかアザに貼るとかいう?」
「違ぇよ。アザなんか、もはや、貼っても貼らなくても一緒だろ。そいつの肘」
…………?
智と呼ばれたその人が指さすところを追うと、俺の肘は結構派手にすりむいてた。
乾いた血が、ひきつり、見たとたん痛くなってきた。
「ボタンとれて、アザつくって、血まで流してたら、もはやレイプだろ。悪目立ちしすぎだ」
「……ああ、まあそうね」
言いながら、翔はスマホを手早く片手で触った。
ちらりと画面をみて、翔はポケットにそれを戻した。
「菊池、すぐ来るってさ」
「そ。ありがと」
智は、笑って起き上がって、俺をみつめた。
その瞳は、さっき階段の踊り場でみた、背筋も凍るような冷たい光はなく、柔らかなふにゃりとした色にかわっていた。
面白いもので瞳の強さが違うだけで、印象が全くかわる。
今の智は、ふわふわした綿菓子のような不思議な雰囲気で、とても四人をビビらせた人とは思えなかった。
ギャップがすごい人だ。
「潤のお気に入りくん」
「……二宮です」
「じゃ、二宮くん」
「……はい」
「俺んとこにいたのは、潤に内緒にしとけよ?」
「…………」
イタズラっぽく弧を描く口元を、俺は見つめ返した。
