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キラキラ

第35章 屋烏之愛


「見ての通りだよ。ややこしいのにからまれてたから連れてきた」

「………ふうん…」


翔、と呼ばれたやつが、俺をじっと見つめてきた。

俺は無意識に体を小さくした。
とれてるボタンとか、首にのこるアザだとか。
今の俺は、不躾な視線に耐えうるような格好じゃない。

すると、翔は、その綺麗な唇をいじりながら、首をかしげた。


「智くん、でもこいつ確か……」

「……分かってる。潤のお気に入りだろ」

「だよね」


思わぬところで松本の名前がでて、俺はビクリと固まる。
うかがうように、翔の視線をうけとめてると、彼は、はぁっとため息をついた。


「今、ここで松本に踏み込まれたら、修羅場だな……」

「……え、二年って、まだ外だろ?」

「もうすぐ学校に帰ってくるよ。芸術鑑賞なんて、午前中で終わるのに」


言いながら、翔は俺のそばにしゃがみ、険しい顔で俺の首筋を指でなぞった。


「……派手につけられてるな。これ松本が?」

「……ち、違います」

「違うよ、翔くん。そのややこしいのにからまれてるときにそいつらにつけられてた」

「……ふうん」

「……事実が分かったら、そいつら潤に半殺しにされるだろうけどな」

「……殺さなきゃいいけど」


物騒な会話をしているが、俺は心のなかで妙に頷いてた。
あの松本だ。
四人は明日から学校来れないかもしれないな。

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