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キラキラ

第35章 屋烏之愛


昼休みの終わりを告げる予鈴の鐘が鳴る。

俺は、どうしようか迷ったけれど、寝ている彼の横に、このままいることをきめた。


どうせポロシャツのボタン弾けてるし。
首にはキスマークついてるし。


どのみち教室には帰れない。


お山座りをして、ぼんやりと空を見上げた。

授業が始まり、校舎は静まり返る。
エアコンが稼働中だから、窓も閉められてるせいで、何百人もこの足の下に生徒がいるはずなのに、物音がしない。

へんな状況だけど、なんだか平和だな……。


小鳥のさえずる声をききながら。
俺も目を閉じた。





「貴様、誰だ」


硬化した冷たい声に、ふっと意識が戻る。
顔をあげると、寝ているあの人を守るように、一人の男子生徒が俺の前に立ちはだかっていた。


白い肌に、大きな瞳。
男にするには惜しいような、人形のような顔立ちだ。黒い髪の毛は柔らかに整えられていて、優等生のような雰囲気がある。

松本とは違う系統の美形だ。

そいつが、俺を冷たい目で見下ろしてる。


俺が、えっと……と、口を開こうとすると、そいつは僅かに眉をひそめた。


「おまえ……」

「……そいつ、俺の拾い物だよ……翔くん」


そいつの後ろで、寝ていた彼が、寝たままの姿勢で呟くように言った。

そいつ……翔くんは、肩をおとして振り向いた。


「脅かさないでよ……もう」

「ふふ……ごめん。ちょっと気になる子だったからさ……」

「訳あり?」


すると、寝てた彼はちらりと俺をみた。

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