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キラキラ

第35章 屋烏之愛

その人は、迷うことなく最上階まであがってゆき、立ち入り禁止の屋上の扉に手をかけた。

え……いーの?、と思う間もなく、スタスタとそのまま外に出て行くのを、おそるおそるおいかける。


「お……いい天気」


彼の呟きを聞きながら、その眩しさに目をすがめた。
鉄の扉の外は、昼下がりの真っ青な空と爽やかな風。
日差しは暑いが……影に入れば、そうでもないだろう。

案の定、その人は、物入れの横にある影に入って行き、壁際に、よいしょ、と腰をおろした。

アウトドアで使いそうなマットや、小さな椅子があるところをみると、ここで過ごすことを常としている人のようだ。


「どうした?……座れよ」

「あ……はい」


柔らかな声で促され、俺は、こくりとうなずいた。
ポロシャツの前をぎゅっとにぎりしめたまま、俺も、ペタリとその場に座った。


すると、彼は満足そうに頷き、ゴロリと横になった。
……そして、そのまま目を閉じた。


え?!


俺は目を剥く。


……冗談だろうか。

いや、でも……これポーズだろ。
俺に用事があったから、この人俺を連れてきたんだよね?


俺は、辛抱強く黙って、彼を見つめていた。
……だが、やがて、スウスウと寝息がきこえてきた。


え…………



俺は唖然とする。



……寝てる?マジ?
……これ、どうしよう。

てか、この三年は何者なんだろう。

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