
キラキラ
第35章 屋烏之愛
二年生が全員、学校行事で出払っていて、朝からいつもより密度の低い校舎内だった。
故に、死角はたくさんあった。
美術の課題をとりにいこうと、美術室にむかっていると、突然、誰かに階段の踊り場に突き飛ばされた。
「うわっ」
壁に肩をしたたかにぶつけ、痛みに顔が歪む。
明らかな悪意を持つ仕掛けに、
「…ぃ…ってーな!」
怒鳴った。
見上げれば、目の前には同じ一年が四人。
別のクラスのやつらだ。
全員体がそこそこでかいから、力ではかないそうにないと判断する。
四人に囲まれた俺は、全力で睨みつけた。
「なにすんだ、てめーら」
「……おまえ調子にのってんなよ?」
ガキ大将みたいなやつが俺に顔を近づけてくる。
「ちょっと松本さんに気に入られてるからって……うぜーんだよ」
「…………はぁ?」
松本に?
俺は開いた口が塞がらない。
なんだ、それ。
嫉妬?俺に?
うそだろ?
おまえ小学生かよ。
俺は、あきれてものも言えないのに、恐怖で口が聞けないと勘違いしてるようで、四人はゲラゲラ笑った。
……馬鹿馬鹿しい……馬鹿馬鹿しすぎる。
俺は大きなため息をついた。
なんか……いい加減この学校の程度の悪さに辟易とする。
カツアゲする先輩がいるかと思えば、大勢で一人を吊し上げるだ?
バカじゃねぇの?
いくら頭がよくても、こんなやつらばっかりならば、普通の地元の高校に行けば良かったとすら思う。
そこそこの進学校なのだから、もちろん聖人君子のようなやつらばかりが集まるわけないとは思うけど、もう少しマシな学校だと思ってた。
