
キラキラ
第35章 屋烏之愛
そんなことが分かってからは、もう、彼の目の前で着替えることができず。
気に入ったから、という理由で、俺はTシャツのまま帰ることにした。
松本は、そうか?と上機嫌だ。
いや、もうそんな話聞いてしまったら、生着替えなんかできるかっての……。
俺は、曖昧に笑ってみせた。
家まで送る、と、いう申し出も丁重に辞退して、それなら、と、最寄り駅まで一緒に来た。
ところが、なんか一本ネジがとんだのか、あろうことか、最後に、と、松本が顔を寄せてきたから、俺はそれらをあわててスルーしてみせる。
松本は、ちょっと不機嫌な顔になったけど……もはや怖くもなんともないっての。
だって、俺に惚れてんだよ、この人。
ヤンキーの頭がだよ。
「今度ね」
と、呟いたら、松本は、口を尖らせて頷いた。
いや……さぁ……でも、さぁ…………松本って人前でこんなことする人だったんだ?
いつものクールな振る舞いはどこいっちゃったの?
俺は、戸惑いつつ、最後にはっきりさせたいことを聞いてみた。
「……あのう……俺は松本さんの彼女ですか…?」
「不満か?」
「………それは……」
「俺は、お前がずっと好きだ。出会った日から」
「…………」
「……嫌なのか」
「……えっと……」
いや、奴隷だと思ってたのに、いきなり格上げされた俺の気持ちはよ?
……格上げっていう言葉が適正かどうかも、謎だけど。
恋人みたいな扱い、と、恋人としての扱いじゃ、意味合いも違ってくるし……
「まぁ、お前は俺のものだから。拒否権なんてないけどな」
さらりと笑われて。
俺はオトコノコですけど?と、反論する機会を完全に失った。
