
キラキラ
第35章 屋烏之愛
ゆっくりと離れていく松本の顔を呆然と見上げる。
柔らかな感触を残した唇が震える。
えっと……
松本は、これまで見たこともないくらいの優しい顔をしていて。
俺は、そのままそっと抱き寄せられた。
いつも感じてる香水の匂いが、ふわりとひときわ強く香った。
肩越しにみえる窓の外を見つめながら、俺は、アクションできないまま、突っ立ってるだけだ。
何が俺の身に起きてるのか
松本はゆっくりと、いとおしそうに俺の頭を撫でた。
「……カズ」
「…………」
「……カズ(笑)」
松本の声に笑いが混じる。
俺は、小さく、はい、と答えた。
松本は俺の髪にキスしたみたいだった。
そしてそのままゆっくりとソファに座るように促され、俺はギクシャクとした動きでなんとか座る。
松本は俺から離れて、もとの位置に戻った。
「……クーラー効いてきたな」
何事もなかったように松本が再びコーラをあおった。
対して俺は、今や体全部が心臓になってしまったんじゃないかと思うくらい、ドキドキがフルマックス。
今……今
俺は震える唇を無理やり動かして、涼しい顔をしてる松本の名を呼ぶ。
「松本さん……?」
「……ん?」
「……今…のは…?」
「……キスしたこと?抱きしめたこと?」
「……両方……」
松本は、空になったペットボトルの蓋をしめて、にっと笑った。
「カズが可愛かったから」
