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キラキラ

第35章 屋烏之愛


Tシャツを握りしめたまま、かたまってる俺に、松本が不思議そうに声をかけてきた。


「着ねぇの?」

「あ……いや、着ます!」


松本の前で裸になるのをためらう自分に、逆に驚く。

しっかりしろ、俺。
体育でも、普通に教室で着替えるじゃないか。
同性同士で、着替えが恥ずかしい方がおかしい。


自分に何度もいいきかせて……俺はポロシャツのボタンを弾き、せーの、で脱ぎ捨てた。

クーラーの涼しい風が、肌にダイレクトにあたる。
上半身をさらした状態が、とてつもなく恥ずかしい。

俺は震える指で、Tシャツを手に取り、焦りながらズボッと頭をいれた。


「カズは、頭からいれるんだな」


松本が、呟く。


え?と、いいながら腕を通した。

パリパリした新しい生地の匂いがする。

全部着ると、緊張をかくすように、どうですか、と、くるりとターンしてみせた。


「俺は、腕から通すからさ……お、似合うじゃん」


両手を広げて、松本の前に立った。
松本は立ち上がって、俺の裾やら袖やらを直し、最後に襟ぐりの部分に触れた。


「ちょっとでかかったかな……アメリカンサイズだもんなぁ」


彼のその指が鎖骨部分に触れて、俺は息をのんだ。
触れられた部分が異常に熱く感じる。

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