
キラキラ
第35章 屋烏之愛
じゃぁ……と、ソファーの端に座ると、松本は、ニヤッと笑って、ペットボトルをあおった。
その視線が俺に向けられてるのを感じて、俺はなんだか急にドキドキしてきた。
いやいや……この人はヤンキーの頭で……気まぐれで俺をつれ回してるだけで……
ぶつぶつ念じながら、蓋をあけ、同じように口をつける。
「暑いな、この部屋……クーラーがまだきかねぇな」
いいながらポロシャツの袖をまくり、ノースリーブ状態にする松本。
「……!」
意外と、筋肉質な腕がみえ、俺は思わずむせた。
「ごほっ……けほっ……」
「……は?大丈夫か」
「だ……だいじょぶ……です……けほ」
息を整えながら目をごしごしと擦った。
ヤバイ……俺、おかしい。
この家にきて急にこの人を意識してる。
プライベート空間という最大の懐に入れてもらったからなのか、ヤンキーとボンボンのギャップにやられたのか。
穏やかに微笑んでる松本は、悪いやつにはどうしてもみえなくて。
どうして俺なんかをそばにおいてるの?
考えれば考えるほど、あぶない発想に流されそうで、俺は焦って、土産の袋をさぐった。
「ええと!試着……してみようかな」
「お。してくれんの。それ、マイケルジャクソンの関連商品なんだ。似合うとおもうぞ」
嬉しそうな松本の声を聞きながら、真っ黒なTシャツをひっぱりだす。
目の前で広げると、銀の羽のようなデザインが上半身にちりばめれていて。
ヤンキーぽいといえば、ぽい。
マイケルといえば、マイケル。
どちらにしてもお洒落だった。
こんな貧相な体に似合うかな、とそこまで思って、はた、と気づいた。
……俺、ここで着替えんの?
