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キラキラ

第35章 屋烏之愛


俺の部屋が丸ごと入りそうな玄関を通りすぎ、どこかのホテルを思わせるような、真っ白な吹き抜けの階段をのぼり、二階の松本の部屋に通された。

ジュースでも持ってくるから、ちょっと待ってろ、と言われ、松本はすぐにでてゆく。

俺は、あらゆる規模に圧倒されながら、ラグの一番端に遠慮がちに正座した。


……コーコーセーの部屋ですか。これが。


広さはもう、俺んちのリビングじゃん。


ベッドと勉強机があるからかろうじて学生が使ってるとわかるけど。
ソファーはあるわ小さなテーブルはあるわ、コンポもテレビも、なんなら冷蔵庫まである。
ギターもある。テレビゲームもある。


……俺はこの部屋から一歩もでないで生活できる自信があるぞ。


キョロキョロしながら、ふと、目に入るのは、反対側の壁沿いにある、起きたままの少し乱れてるベッド。
それがなぜだか生々しく感じて、俺はちょっと目をそらした。


ヤンキーとしてのリーダーをはってるわりには、金持ちで健全なイメージの部屋のギャップに、ますます、松本がわからなくなる。


「……こんなんしか見つけられなかった」


ペットボトルのままのコーラを二本手にして、松本が、もどってくる。

ん、と渡され、


「……充分です……ありがとうございます」


と、うけとった。


「……そんな端に座らなくても(笑)ソファー座れば」


キャップをあけながら、松本は、テーブルの前にあぐらをかいた。

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