
キラキラ
第35章 屋烏之愛
促されるまま電車にのり、とある駅でおりて歩くこと数分。
今日の喧嘩の話とか、学校の話をポツポツする松本に相槌をうってるうちに、ふと、自分がいわゆる高級住宅街に足を踏み入れてることに気づいた。
立ち並ぶ家は、どれもこれも何坪?というような豪邸揃い。
え……まさか、と若干引きながら松本の隣を一生懸命ついていってると、そのなかでも、ひときわながーーーい壁に囲われた、大きなお屋敷の前で、彼は立ち止まった。
え……ここ……?
松本に続いて、門をくぐり足を踏み入れたそこは、広大な庭。
玄関までのアプローチは、手入れされた庭木や花が咲き乱れ、おおよそ不良軍団のトップがいる家には見えない。
ほぇー……やっぱり、ボンボンだ……と、あちこちキョロキョロしながら歩いてると、振り向いた松本が、ふっと笑んだ。
「自宅に誰か呼ぶなんて初めて」
言って、ポケットからスマホをだし、扉にかざした。
「……え。なにしてんですか」
「………なにって。鍵」
「…………」
……家の扉、スマホで開いちゃうの??
唖然として立ち尽くしてると、解錠した扉を大きく開け、どうぞ、と促される。
俺はギクシャクと、お辞儀をして、お邪魔します……と、いい香りのする家に入った。
