
キラキラ
第35章 屋烏之愛
そうして、待つこと30分。
今や嗅ぎなれてきてる香水の匂いが、ふわりと鼻をかすめた。
顔をあげると、松本がニヤッと笑ってたっていた。
「……おまたせ」
「……終わったんですか?」
「おう。上田が大活躍でな」
ぴっと親指をたててウインクしてくる。
俺は、苦笑いしてアプリを閉じ、立ち上がった。
「秒で……っていったからプレッシャーになったんじゃないですか」
「あいつはそんなタマじゃねーわ。それに、今回は相葉や流星も軽く仕留めてたしな。楽勝」
「そうですか……」
うちのようなボンボン学校は、よくも悪くも目立つ。
近隣の学校のヤンキーからしたら、うちを潰せば名があがると思ってるやつも少なくないときく。
だけど、金もあって、そこそこ才もあるこの人たちは、実はなぜか喧嘩も強かった。
加えて、みんなそこそこ顔もいい。
結果、それが面白くないとまわりから喧嘩をふっかけられても、受けてはすべて勝ってゆくので、裏の評判だけがあがっていく。
なんなら、ひそかにファンの女の子までいるというから驚きだ。
このリーダー、松本も、実は大人気なんだ、ということを俺は最近知った。
「怪我がなくて良かったです……」
スマホをポケットにねじこみ、俺より高い位置にある松本の顔を見上げる。
「当然さ。さて。どこ行く?」
と、嬉しそうに笑う松本は……もはやさっきまでのヤンキー軍団のリーダーの顔をしてない。
年相応の男子高校生の笑顔だった。
女の子がとびつくのは、この顔なんだろうな。
そのギャップを感じる瞬間に、女の子じゃないけど、俺も最近ちょっぴりドキドキするんだ。
