
キラキラ
第35章 屋烏之愛
喧嘩の現場を見たいとは思わない俺は、少し離れた公園のベンチに座って松本を待つ。
『いいか!誰に声をかけられてもついていくんじゃないぞ!』
俺に念押しして上田たちと歩いていく松本の後ろ姿は、ただのヤンキーなんだけど。
それにしてもついていくってなんなんだよ?と、苦笑いしてしまう。
帰るなよ!じゃないんだ。
俺が黙って帰ってしまうかもという懸念はないわけね?
ベンチにすわり、スマホゲームのアプリを起動させた。
おとなしく、松本の帰りを待つ自分が我ながら面白い。
毎日一緒に過ごしてる、まるで、恋人同士のような状況に、最初こそ戸惑ったけど、今は、半分あきらめ……半分受け入れてる感じだ。
松本の、俺のものになれ、という発言は、マジだった。
その日から俺にベッタリな松本は、朝も昼も下校時も一緒にいることを要求した。
そして……俺をめちゃくちゃ甘やかしてくれた。
別に手を繋いだり、キスしたり、とかそういうんじゃない。
好きだと言われたわけでもないし。
だけど、一緒にいると、まるで恋人のように、暑くないか、とか、腹減らないか、とか、映画行こうぜ、とか、ものすごく紳士的にリードしてくれる。
一心に俺だけをみてくれる。
俺の立ち位置が、あの人のなかでなんなんだろうという疑問はあるものの、かつて、これだけ自分が他人に求められることがあっただろうか、と思うと、まぁ……気に入ってもらったのならいいか、と俺はこのポジションになんとなくとどまってる。
