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キラキラ

第35章 屋烏之愛


「いーんだよ。お前に買ってきたんだからとっとけよ」

「でも、こんなに……」

「うるせぇな。ほら」


戸惑う俺の手に、松本は無理矢理、土産のビニール袋を持たせた。


俺……これだけのことを、あんたにしてもらう義理はないんだけど……


そう口にだしたいけど、そんなことを言ったら不機嫌になるのは目に見えてる。

だから、


「アリガトウゴザイマス」


と、ぺこりとお辞儀をした。

松本は、それでいい、というように満足そうに頷いた。


「潤、K高のやつらが今朝喧嘩売ってきたけど……買っちゃっていいか?」


近くに座ってた上田が、待ちかねたようにぼそっとこぼすと、周りの軍団が、同意を求めるように松本を見上げた。

血気盛んな感じのやつらが、今にも走り出しそうな顔をしてる。

松本は、うーん……と、いう顔になり、俺の肩を抱いた。


「いいけど……俺は今日はカズと出かけようと思ってたから、行かねぇよ?」


全員の顔がガッカリと落胆の色に染まるのをみた。
ほら、始まった、と言わんばかりだ。


えっと……


俺も困るんだ、この展開。
まるで、松本の愚行が、俺のせいみたいになってるから。

喧嘩にリーダーがいかないってありえなくね?

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