
キラキラ
第35章 屋烏之愛
「……おまえら、カツアゲみてーな、ダセェことすんなって言ったよな?」
潤の瞳が冷たく光る。
横山がぶるっと震えあがり、ブンブンっと首をふりながら後ずさった。
「や。金はとってへんで?ちょっと生意気な面してたから、話を聞いただけや」
「………相手一年だろ」
「そそ」
「……たいがいにしとけよ」
「分かった分かった」
からくり人形のように、コクコクと頷き、なんとかその場を収めようとする横山と、そんなやりとりを黙って冷ややかに見つめる上田。
……なんだかこの三人を見ただけで、力関係が分かった。
潤ってのが、親玉だ。
その下が上田……で、横山か。
校内履きを確認すると、ラインの色は全員二年生。
と、すると、この、潤って呼ばれてるこいつが松本かな……?
俺があれこれ考えながら成り行きを見てると、潤は上田に合図をした。
上田は、黙って手を離す。
俺は、座り込みそうになりながらも、なんとか踏みとどまり、自由になった体をさすった。
「って……」
馬鹿力め。
絶対アザになってる気がする。
俺がねじりあげられた腕を確認してると、突然頬に誰かの手が触れた。
驚いて顔をあげると、潤が不敵に笑んでいて。
「……おまえ、ひ弱そうにみえてガッツあるな」
「……え?」
「……顔もいい」
「……」
そう呟かれて、細い指で顔の輪郭をなぞられる。
気味悪ぃ……なんだよ…?
俺が、黙ってると、潤は、ふっと微笑んだ。
そして、反論を許さないような断定口調で、彼は宣言した。
「……決めた。お前、俺のものになれ」
……これが、松本潤と俺との出会いだった。
