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キラキラ

第35章 屋烏之愛


「……って……」



生きてる……



俺はズキズキする膝をさすりながら、ゆっくり目を開けた。
……膝も肘もあちこち痛い。
なんなら誰かに思いっきり引っ張られた二の腕はすごく痛い。

だけど、そのおかげで階段から落下せずにすんだ。
それによる怪我を思えば、はるかにマシだ。

気づけば、俺は助けてくれたやつの腕のなかにいる。
ギクシャクと体を起こせば、下敷きになってたそいつも、無言で一緒に体をおこした。


「あ……ありがとう」


目があったとたん、息をのんだ。
スーパーヒーローのような助けかたをしてくれたその人は、大きな瞳をしていた。
金のメッシュの入った柔らかそうな黒髪。
気が強そうなキリっとしている眉。
少し尖った厚い唇は、ドキリとするほどセクシーで。


「……別に。目の前で落ちてくのただ見るのも、胸くそ悪いと、思っただけだ」


低くぼそりと吐き捨てられた言葉。

声まで男前だ。

女なら惚れるな。ぼんやりとそう思ったとき。


「潤!そいつ、そのままつかまえてろ!」


上田が追い付いて、俺の腕を引っ張った。


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