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キラキラ

第35章 屋烏之愛


無言でぐいぐい引っ張られる腕。
相手も小柄なのに、その馬鹿力に、俺はたまらず声をあげた。


「ちょ……痛い」

「黙れ」

「痛っ……逃げないから……ちょっと放して」


俺が顔を歪めると、そいつはちらりと俺をみて、舌打ちとともに手を離した。


「え。離すん」


面長が、びっくりしたようにつっこむから、その目つきの悪いやつは、仕方ねぇだろ、と、突き放した。


「傷いれた状態で、潤のとこに連れていったら、俺らがシメられるじゃねぇか。馬鹿か」

「でも…こいつすばしこいで?」

「前後挟んでりゃ問題ないだろ」


確かにこれじゃ逃げるに逃げれない。
俺は、わあわあ言ってる二人の会話を聞きながら、とぼとぼと歩いた。

俺、今からこいつらにシメられんのかな……。
痛ぇの嫌だなぁ……。
憂鬱な気分でいたとき。


「……あきれたな。一年にもう手を出してんのか、お前ら」


凛とした、別の声が割って入った。


目をあげると、そこには涼やかな目元の色白の生徒が腕を組んで立っている。
校内履きのラインは三年生。


「菊池……」


俺の前で、その、目付きの悪い方が唸るような声でその名を呟いた。


「そんな、ひ弱そうな一年を相手にしなきゃいけないほど、お前ら喧嘩弱かったか?」

「……てめぇ、今なんつった」


殺気だつ金髪に、面長が、あわてて間に入った。


「上田!ほっとけや」

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