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キラキラ

第34章 バースト9


その少し開いた唇に、もう一度軽くキスをして。
俺は潤の細いからだをぎゅっと抱き締めた。

潤が遠慮がちに俺の背中に指を這わす。
ぴったりとくっついてきたがるその潤の重さ、ぬくもりや香りを体全部で受け止める。

それは、全身で、愛して、と求められてるみたいで。

潤のうなじに顔を埋めて、その柔らかい黒髪を優しく撫でた。

不安だったのだろう。

ヤキモチやきの恋人でごめんな。



「…………潤」

「……ん?」



もうひとつ。

あの学祭の日の誤解も解いてやらないといけない。
こちらから言ってやらないと、潤は、俺に気をつかって永遠に言わないだろうから。


「……あとさ、俺、おまえに話さなきゃいけないことがある」

「…………なに?」



いっきに強ばる体が切ない。

違うよ。俺が悪いんだ

俺は抱き締める腕をゆるめ、潤から少し体を離した。


「……先週のこと。山下先輩から聞いたよ」


そのとたん腕の中の潤が、弾かれたように顔をあげた。
その瞳の色は、驚きと戸惑いと……ほんの少しの猜疑。


ああ、そうだよな、と思う。


信じてくれてるだろうと思ってることでも、きちんと真実を伝えなきゃ、実際はその人がどう考えてるのかなんてわからないものだ。

潤自身も、俺を疑いたくない気持ちの方がはるかに強いはずなのに、それを俺が肯定してやらないことには、不安だろう。

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