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キラキラ

第34章 バースト9


閉じた瞳から次々と流れる涙に、口づける。

しょっぱいそれを、ちゅっと吸い。
目元に……頬に優しくキスをすると、潤は強ばった体を緩めて、倒れるように俺にしがみついてきた。

俺はしっかりと抱き締めて、その背中を優しくさすりあげる。

潤は小さく鼻をすすり、俺の心をうかがうように顔をふせたまま聞いてきた。


「……怒ってる?」

「怒ってた。……というか、嫉妬で狂いそうだった」


こちらも正直に胸のうちをさらした。


かずとの、待ち合わせのために、時間潰しで入った講堂。
有志でやるバンドや、コントなどをぼんやりとみてるうちに、この文化祭の花形企画らしい、全クラス参加の仮装大会が始まった。

それなりに笑えると思いながら、何も考えず観ていると。

ところどころ血にそまってる、白いワンピースをきた美しい人物がでてきた。

心臓がとまるかと思った。
潤だとすぐにわかった。

色白のあいつは、ブロンドのウイッグがよく似合って。
でも、俺にしたら、目立つ場所に出てきたというだけでアウトだ。
さらに女装だなんて、ありえない。
まして、あいつが男に抱き締められてからのくだりは……思い出したくもない。

念動力で、相手の首をもう少しでへし折るとこだった。

危なかった。
あいつが跳びそうなことに気づかなかったら、そのまま殺人者になるとこだった。


「今は……?」

「おまえの涙を見たら、怒りなんか消えちまったよ……」


ふっと笑って囁く俺の言葉に、潤は顔をあげて困ったような顔で微笑んだ。

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