テキストサイズ

キラキラ

第34章 バースト9


突如、ふわりとした感覚におそわれ。


視界が真っ白にそまりつつあるなかで、空を飛んでることだけが、なぜだか理解できた。


……そしてすぐに、どこか埃っぽいところに立たされたと感じた瞬間、体が折れそうな力で、ぎゅうっと抱き締められた。

その力強さと香りは、俺が大好きなそれ。


……翔……?


「しっかり立て直せ!」


耳元で厳しい口調で叱責され、薄れゆく感覚に渇が入る。


「ん……っ」


続いて、深く口づけられる。
触れたところから、膨大な温かなチカラが一気に注ぎ込まれる。

今までにない強引さで、引きずり戻されたように俺の暴走スイッチが止められた。

荒療治的な仕打ちに、はっと我に返り、目を開ける。

目の前には、薄暗がりの中でも分かるくらい怖い顔をした翔。


「……言い訳は夜に聞く」


低く吐き捨てられたかと思ったら、ぱちんと翔が鳴らした指で、反対側の通路からスポットライトが俺にあてられた。


暗闇のなか、照らされる俺は、これ以上ないくらい目立って。


一瞬の静寂ののち、うおーっという割れんばかりの拍手があがった。

同時に、バンっと講堂の電源が戻った。

柵ごしに見下ろすと、満員の観客たちがすげーっとか言ってるのがわかる。

どうやら俺は二階席の端に立っていたようだ。

花道の真ん中では、生田が目を丸くして俺を見上げてるのがわかる。

どうやってやったか、とか誤魔化すのに苦労しそうだが、演出的にはイリュージョンで落ち着くのだろうか。

だが、全校生徒の目の前で跳んでしまうことを考えたらはるかにマシだ。


翔の機転で助けられた…………だけど。


見られた。
よりによって他の男とキスするところを。


まだ家に帰ってなかったなんて。


俺は、力なく微笑みながら、頭を抱えたい思いだった。




俺たちのクラスは優勝した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ