テキストサイズ

キラキラ

第34章 バースト9


袖でみてるより、ライトが明るい。
花道を両側から照らしてるから、そこに進み出ると、客席がもう全く見えなかった。

俺は、小走りで走り出した。
一応、ヒロインであるならば、そんなに裾をおっ広げて、本気で走るわけにはいかないから、すこし遠慮がちに。

演技経験なんかないけど、設定上後ろを気にしながら走ることくらいならできる。

花道を半分くらいまでいったところで、ものすごいどよめきと歓声に気づいた。


まぁ、俺の女装にだろうけれど。


くそっ……笑わば笑え!
と、自棄糞で先頭に走り出る。


ふっと振り返ると、ジャック役の生田は、真後ろまで追いかけてきてて。
これがまた真顔なのが、なかなか怖い。

彼は、コツコツと歩いてきてその場で立ち止まった。

……どうするのだろうと思っていたら、いきなり抱き寄せられた。

きゃーっとも、うおーっともつかない歓声があがる。


ちょっ……これ、どう対応したらいいんだ俺は……!


振りほどこうとしたらいいのだろうか。


焦ってるうちに、耳元で生田が小さく「こっち向いて」と囁いた。

体をひねって、顔をあげた瞬間、ごめん!という呟きとともに、腰を抱かれて、頬をつかまれ。


……あっという間の出来事だった。


最初は何されてるか分からず、体が硬直したが。

割れるような歓声と、きゃーっという金切り声に、瞬時に何されてるか悟り。


やつの唇の柔らかさを感じたと同時に、かっと脳みそが沸騰した。
バンっと目の前が弾けてチカラのリミッターが弾けとんだ。

ヤバいと思う間もなかった。


急激に白く染まりかける視界。


だが、同時に講堂の電源が落ち、暗幕をはっていた講堂は真っ暗になった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ