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キラキラ

第34章 バースト9



しばらく待って、入場したそこは、まぁすごかった。


血みどろのマネキンの首は飛んでくるわ。
リアルな人形の死体が目の前に落ちてくるわ。
目玉が、そこかしこにぶら下がってるわ。

びっちりと暗幕をはられた真っ暗闇と、懐中電灯と、音響の相乗効果で恐怖も五割増し。

しかも、腹が立つことに、高校生軍団のくせに、どれもこれも異常にクオリティーが高くて、俺は平静を保つのに苦労した。

グロいものが嫌いだ、とか、別にそんな可愛いことは言わないけど、いきなり目の前にリアルな首が飛んできて、驚かないやつはいないだろ。

せめて叫び声だけはあげないように、頑張るしかない。

しかも、案内してくれると思ってた潤は、俺を先に歩かせるし。


「だって、俺は仕掛け全部知ってるもん」


しれっと言ってのける顔は、絶対に面白がっていて。


思い通りの反応を見せてなるものかと、時々、びくっとしてしまいながらも、なんとか暗闇を手探りで進んだ。


だが、最後の最後で。


暗やみに、ほのかに浮かび上がるオドロオドロシイ井戸の中から作り物の手がでてきて。
お疲れさまでした、なんてお札が貼ってあったから完璧に油断してたんだ。

逆サイドから、わっという声と共に、血だらけの浴衣をきたお化けが飛び出してきて、思わず、うおっと声をあげて、傍らの潤のひじをつかんで引き寄せてしまった。


それは完全に無意識な行動で。

本能的に潤を守ろうとしたんだと思う。
でも、はた目から見たら、俺が抱きついたみたいに見えただろう。


男子高校生に、お疲れ様でした~っと爽やかに教室の外に出されたときの気まずさといったら……。


「……怒ってる?」

「怒ってない」


潤が心配そうな声音になったのに気づき、ようやく歩調を緩めた。

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