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キラキラ

第34章 バースト9


「結構賑わってるな」

「翔の学校ほどじゃないけどね」


わたあめを作ってるテントの中を眺めながら、二人でのんびり歩く。
甘い匂いが漂い、いらっしゃいませーという元気な呼び込みの声が飛び交う。
この場にいる全員が、どことなくはしゃいでて、不思議なエネルギーに満ちあふれてた。

自分も一週間ほど前に同じ雰囲気を味わったが、潤の学校というだけで、なんだかソワソワした。
アウェイ感とでもいうのか。

隣を静かに歩く潤を、そっとうかがい見た。

もう、こちらから、先週の出来事に対して問いただすことはやめようと決心してから、初めて顔をあわす。

黙って俺の歩調にあわせて歩いてる潤は、特段やつれてる風でもなく、とりあえず安心した。


「……なに?」


潤が、俺を見る。
その揺れる瞳の奥の影の意味は、今や俺は知ってしまっているから、胸がキリ……と痛んだ。

俺を信じてくれているだろうからこそ、何もいわない潤は、向けられた悪意を一身にうけて傷ついているはずで。
跳ぶほどのダメージをうけた心を、当日に聞いてやり、癒やせなかったことが悔しい。


…………今すぐにでも抱き締めたい。


どんな想いで、俺に会いにきたのだろう。
どんな想いで、俺に、ごめんね、と言ったのか。


俺は、作り笑いにならないように、気を付けながら首を振った。


「いや……相変わらず可愛いなぁと」

「……バカ」


口を尖らせて、小さく吐く潤。


ごめんな。
俺は、泣かせてばかりだ。

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