
キラキラ
第34章 バースト9
そして、俺は、山下先輩の口から、ミズキが放った、潤に対する思いもよらぬ攻撃的な言葉を知ることになる。
「…マジか……」
泥棒だ?
キモい?
誰が、だ。
クソくらえだ……!!
あまりの、ありえない言いがかりに怒りしか湧いてこない。
「ごめんね。事情がよくわからなくて。だけど、その場はとりあえずミズキを遠ざけなきゃ、と思って、美人くんをそのままにしたんだ」
「いえ……」
「でも、結構周りの注目集めちゃってたし…気になってあとで戻ってみたけど、もういなくて」
山下先輩の声をききながら、するすると謎が解けていくのがわかった。
まるで、からまった糸がほどけるように。
今までわからなかった空白の時間の潤の行動が、想像できた。
きっと間違いなく跳んだ。
それほどメンタルが柔な奴でもないけれど、俺のことに関しては、驚くほど繊細なやつだから。
見知らぬ人間に、公衆の面前でわけもわからない難癖をつけられて。
事故のような暴発で跳んだんだ。
だから、すぐに戻ってこれなかった。
だから……俺に真実を言えなかったんだ。
俺は、唇をかんだ。
跳ぶほどの何かがあったとは思っていたけど、それが俺がらみとは思ってなかった。
それもこんな嫌な形で。
事実無根なのはわかってくれていると信じてるけど、それでも悪意を向けられるのは、誰だって辛い。
山下先輩は、俺を気遣うように優しく言う。
「……ずっと気になってた。美人くんにもごめんねって言っといて……?」
「……教えてくれてありがとうございます……」
俺は、小さく頷いて答えた。
