
キラキラ
第34章 バースト9
「……なんすか」
一応返事はしてやるものの、失せろ、とばかりに、俺はまた文庫本に目をおとした。
すると、俺が顔をあげないからか、
「んじゃ、失礼して」
と、山下先輩は、向かいの椅子をひき、すとんと腰をおろした。
……げ。
めんどくせー……座るんじゃねーよ。
俺は『不機嫌』と顔にかきながら、しぶしぶ奴の顔をみる。
…………。
正面から初めてまともに見たが、山下先輩は、かなりの美形だった。
優しい大きな瞳に、すっとした鼻。弧を描く唇はみずみずしく、男臭いというより、どちらかといえば女性的な印象だ。
茶髪の前髪は長く、そこからこちらをじっと見つめる目は、意外なほど澄んでいて、チャラいやつにありがちな、うそ臭さはあまり感じられなかった。
「あのさ、ここで出会ったあの時の彼元気?」
「あの時……?」
その彼から出された話題にドキリとする。
潤のことだろうか。
「そ。黒髪のくせっ毛の目が大きい美人くん?」
「……あなたに関係あるんすか」
俺はまたしても警戒レベルをあげた。
潤狙いならお断りだ。
紹介して、とでも言うんだろうか。
すると、山下先輩は心配そうな顔になり、
「ううん……悪かったな、って思って」
と、予想外のことを言ってきて、俺は目を見開いた。
