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キラキラ

第34章 バースト9


コーヒーを飲みながら、智兄に今日一日にあったことを順序だてて説明する。
その作業は、俺自身の混乱してた頭を、整理できてゆくものでもあった。



潤は。

昨日の打ち合わせの電話では、とても弾んだ声をしてて。
俺の店に来たときは、俺の格好に見惚れてたらしくて。
かずたちと、まわってるときは、たのしそうにしてて。
でも、待ち合わせ場所には現れなくて。



……話すごとに、潤が、ますます心配でいとおしくてたまらなくなってゆく。

智兄は、ソファにもたれ、俺の言葉ひとつひとつに相槌をうち、考えるように顎に手を這わせた。



「じゃあ……かずは、チカラの使いすぎであんだけ弱ってんだな」

「うん……」

「……潤は」

「あいつも、ちょっと弱りぎみで、俺の部屋で寝てる」

「親御さんは」

「夜勤らしいから、明日の朝帰らせる」


ふーん……そうか、と、智兄はマグカップに手を伸ばした。
あち……と、呟きながら、猫舌の智兄はコーヒーをひとなめし、首を少し傾げた。


「確認だけど、おまえ……入学してから女の子には手だしてないよな?」

「だすわけねーだろ!」


何言い出すんだ!

俺は心外だというように膨れっ面をしてみせる。


「じゃあ……特に何も気にすることないだろ。潤に、1000回愛してると言ってやれよ」

「……」

「潤は……なにかが不安なんだろうけど。おまえになんの落ち度もないのなら、不安を取り除く言葉を飽きるほど浴びせてやれよ」

「…………」


言って、智兄はのんびりと再びマグカップに口をよせた。
綺麗な唇を尖らせ、ふーふーとする仕草を黙って見つめてると、智兄は、んー……?と、俺を見て笑った。


「ほら。いますぐ、添い寝でもなんでもしてこい」


目覚めたときに、おまえの顔があった方が潤は安心するぞ、と智兄は優しくさとす。


「かずの様子は、俺がみとくから」


そういって、智兄は、俺の背中を押した。

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