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キラキラ

第34章 バースト9


もともと覇気のなかった瞳が、ますます潤み、ぼんやりしてる。

まさか、と思って、もう一度額に手をあてると、先ほどとはあきらかにちがう温度に目を見開く。
発熱し始めてる。


……ここまでか。


「いろいろとごめんな、かず。もう寝ろ」


念動力を使い、そっと持ち上げる。
かずはうなずいて、小さく、ごめん……といって、苦しそうに目を閉じた。


久しぶりに腕に抱くかずは細い。
潤も細いが、かずの細さは、華奢なそれで。
飯をもっと、食わせないといけないなあ……と、思う。


そのとき、「ただいまぁ……」と、カチャリと、リビングの扉が開いた。
かずを抱えたまま、思わず壁時計に目を走らせると、九時。


あれ。智兄はたしか今日はデートだったはずだけど……


リビングに入ってきた智兄は、俺たちを見て目を丸くした。

その雰囲気は、いつもの智兄だ。
色気ムンムンの気配はない。

……してこなかったのかな?珍しい。


「おかえり……早いじゃん」

「ああ……昌宏さん明日出張で早いらしいから、……というか、かず、どうした?」


俺の腕の中でグッタリしてるかずの頬にふれ、智兄は眉をひそめた。


「……話せば長くなるから、とりあえず寝かせてくるわ」


俺は、かずを抱え直し部屋に向かった。

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