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キラキラ

第34章 バースト9


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


紫の袴姿に前掛けをした女子学生に、にこやかに問われる。
なるほど、和の喫茶だからか、ユニホームも徹底しているのか。

三人です、と伝えると、部屋の窓際の席に案内された。

小さなテーブル席がいくつかあり、そのどれもが満席で、みんな美味しそうに、キラキラしたなにかを食べてる。
ふぅーん、と三人でキョロキョロしてると、


「来たな」


大好きな柔らかな声が降ってきたので、顔をあげて……ドキリとした。


「どうしたの、翔さんその格好!」

「本格的じゃないですかー」

「……よくわかんねーけど、突然男はこれを着ろって渡されて」


恥ずかしいんだけどさ……、と、ぼやく翔は、紺の作務衣姿。黒の前掛けをした出で立ちは、まるで和菓子職人のようだ。


ぼけっとしてる俺に、翔は、どうした?と俺の顔をのぞきこんでくる。


「ううん……なんでもない」


見惚れてた、だなんて。

そんなのかずたちがいる前で言えるわけ……


「翔さんに見惚れてたんだよ、きっと。ね?潤くん」

「……っ」


ぶわっと頬が赤くなるのがわかった。


「かず!チカラ使ったろ!」


思わず小声で怒鳴ったら、かずが面白そうに笑った。


「使うわけないでしょ。顔に全部出てるんだってば」

「じゅーん?かずはそんなことしない」


かずと雅紀二人に否定されて、ぐっと言葉に詰まる。
冷静になれば、そんなことあたりまえなんだけど、恥ずかしすぎて、八つ当たる場所がそこしかないのだ。


「ははっ……可愛いな、潤は」


翔に、よしよしと頭を撫でられて、もう俺は小さくなるしかなかった。

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