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キラキラ

第34章 バースト9


みたところ、周りに喫茶はここひとつのようだから、迷わず列の最後尾に並んだ。


「翔さんここにいるの?」


雅紀が背伸びして列の先頭をみながら、わおー……すごい人、と、呟いた。
講義室の一室を借りてやっていて、客は、後ろの扉から入り、前から出ているようだが、列は隣の講義室前を通過してさらにその次の部屋にまでのびている。


「ああ……店番って言ってたから。中にいるはず」


俺も、人の多さに驚きながらも、翔の仕事ぶりが見たいから、この列を抜ける気はない。



「甘味処ってなんだろ。和菓子だよね?」

「わらび餅とかじゃない?」


わいのわいの言ってるかずと雅紀の会話に、うなずいてると、俺たちの前に並んでる女子学生のグループの会話が、切れ切れに耳に入ってきて。

あんまり聞いちゃいけないな、と思い、背を向けようとしたとたん、衝撃的な一言が俺に刺さった。


「大野翔ってのがイチオシらしいよ」

「え、何年?」

「一年。あたしの友達、ゼミが一緒らしいんだけどさ。も、とんでもないイケメンらしい」

「まじで!」

「え、彼女いるの?」

「知らなーい。でも、アタックして玉砕した子多いらしいよ」

「面食いなの?」

「さあ。女に興味ないって噂できいたけど」

「え……どーする?男が恋愛対象とかいわれたら」

「いやーっ!ないわーっ!」



繰り広げられる会話に、俺は固まる。

……今の話のいろんな要素が、胸を抉り、表情の強ばった俺に、かずが気がつき、俺の腕をそっと触ってきた。



……旦那さん大人気だね



頭に直接響く言葉。
ゆるゆると、かずを見つめたら、にこりと穏やかに微笑まれる。


気にしない。


そういう瞳で見つめられて。

……俺は、小さく頷いた。


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