テキストサイズ

キラキラ

第34章 バースト9



生田は、ガムテープを貼り終えた井戸らしきものに、今度はべたべた色を塗りはじめた。
黒を混ぜた、まさかのゼブラ柄。


……実に独創性あふれる井戸だ。
出てくるお化けもびっくりだな。


真剣な顔で色を塗る姿を、なんとはなしに見てると、生田がちらっとこちらを見た。

その何か言いたげな視線に、首を傾げる。


「?……なんだよ?」

「……いや。松本さ。他校から知り合いくるって言ってたじゃん?あれ何時くらい?」

「……そんなん、まだ決めてねーし……」


本当だった。
正直、そのへんの打ち合わせは全くしてない。

だいたい、翔は、かずと来るはずだし、詳しい時間を設定しなくても、テレパスの能力のあるかずが一緒なら、連絡がとれない心配なんてない。

もちろんスマホも持ち歩いてるから、翔が単独で動いていても連絡なんていくらでもとりようがある。

まあつまり、早い話が、着いたら連絡、のスタイルなのだ。
だけど、


「なんで?」


なんでそんなこと聞くんだ?


と、訝しげに眉をひそめると、生田はにやっとして、


「それカノジョ?」


と興味津々という感じで聞いてくる。


なんだよ……そういうことかよ。


嘆息して、


「……違うわ」

「なんだ、つまんね」


切り捨てた俺に、「見にいこうと思ってたのに」と、生田は肩をすくめた。


間違ってないよな。

来るのは旦那だし……っていやいや、なに言ってんだ、俺は。

自分の考えに照れて、俺は壁を塗る筆をぐにぐに無意味に動かした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ