
キラキラ
第5章 hungry
「なに、こんなとこで油うってんだ?」
突然、暗がりから、優しい声がした。
雅紀と同時に顔をあげた。
「井ノ原先輩!」
「……大野さん」
視線の先には、リュックを肩にかけ、帰る途中にちょっと寄りました、的な井ノ原先輩と、大野さん。
俺は、動揺した。
気持ちを混乱させてる元凶が目の前にいるから。
……でも、会えて嬉しいのも事実だ。
「ちょっと休憩中なだけですよー。先輩たちは、今帰りですか?」
「おう。いつもよりちょっと早いから寄ってみたんだけど」
嬉しそうに絡む雅紀に、井ノ原先輩も、楽しそうだ。
「……大野さん、手、もう大丈夫ですか?」
俺は気になってたことを聞いた。
あの日の保健室以来、話をする機会もなく、怪我の具合も分からないままだった。
「ああ、もう大丈夫。ありがとう」
大野さんの手のひらは、ぐるぐる巻きの包帯から、小さな絆創膏にかわってた。
俺は、ほっとする。
血だらけの手を思い出すと、今でも背中がぞくっとする。
「そうだ」
雅紀が、いいこと思いついたって膝をうった。
「先輩、もうすぐ練習終わるんで、30分だけ俺らと遊んでくれません?」
「え、なになに。なにすんの」
井ノ原先輩が、興味津々でのってきた。
俺は、唖然とする。
雅紀………なに言い出すんだ?
「3on3です。櫻井が欲求不満でー。強い人とやりたいって、うるさくて」
「なっ………」
ぎょっとして、思わず雅紀の顔をみた。
いやいやいや。井ノ原先輩相手は、無理!
「のった!」
なにーー!!?
あわあわしている俺をよそに、井ノ原先輩は、ノリノリで頷いた。
「いやー。久しぶりに体動かしたいって思ってたんだ。………櫻井、覚悟しろよ。遊んでやっからな?」
「お手柔らかにお願いします……」
井ノ原先輩、容赦ないだろうなあ。
俺は、ははっと苦笑いするしかなかった。
「メンツこっちで、そろえますから」
雅紀が申し出ると、井ノ原先輩は、早くもスマホをだして、どこかへかけはじめた。
「あーいいや。こっちで決める。大野、いける?」
「ん。いいよ」
大野さんが、にっこり頷いた。
「………もしもし。あ、岡田?まだ図書館?10分後に、体育館来て。え?そう。そう。ちょっとつきあえよ。………うん。じゃな」
井ノ原先輩は、瞬く間に三人揃えた。
