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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「え……じゃあ何?タエは皇太子妃で、ミヤは王子ってこと?」


サトコ様が目を真ん丸にしてつぶやいた。


「そのようですが……あまり歓迎されてないみたいで、今のところは名ばかりです」


俺が苦笑いして肩をすくめたら、サトコ様の目がみるみる鋭くなった。


「なに、それ。どういう意味」

「さぁ……われわれは余所者ですからね。昔からの重鎮たちは戸惑われているようですよ」


実際、俺だけいまだに陛下にはお会いしてないものな……。


余計なことは心配させるだけだから言うまい、と飲み込む。
サトコ様が静かに問う。


「……それで。ミヤはどうしたいの」

「俺は王子なんか興味ないので、一刻も早く帰国したい。でも、それをすると、跡取りの問題で母さんが嫁げないらしくて困ってるんです」

「…………」



サトコ様が黙った。
口を尖らしてうつむくのは、彼女の考えるときの癖。
洗いざらしの髪がサラサラと彼女の表情を隠す。

侍女がついていないから、髪をまとめれないのだろうな、と思った。
いつもは器用なくせに、こういうのだけは不器用な人だから。

そんなことを考えていたら、サトコ様がぽつりといった。


「……じゃあ。もう大の国には帰ってこれないの?」

「……帰りたいのですがね」

「俺をこのままほったらかしにするの?」

「そうはいってない」



駄々をこね始めたサトコ様をなだめようとしたタイミングで、


「こちらにいらしたんですか」


甘い響きの第三者の声がとんできた。
二人して階段の上を見上げたら、色白の細身の男が、ほっとしたような顔でこちらをのぞきこんでいた。

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