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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


Miya


この城のバラ園は、実にすばらしかった。

見たことのない品種のバラが咲き乱れ、その圧巻な風景に見惚れていたら、そのうち時間の感覚がわからなくなるほどで。
結果、かなりの時間あそこでぼんやりしていた気がする。

俺は、重い足取りで城内に入りながら、先程のバラを思い浮かべた。

美しい深紅のバラや、可愛らしいイエローの小さなバラ。さまざまなバラが咲いていて……。

サトコ様のお好みは、きっと白いバラだ。

俺の座ってたベンチに、一番近い位置に咲いていた可憐な花弁を思う。

きっと、目を輝かせてくださるにちがいなかった。
花が好きな彼女は、香りを感じながら、その場から離れようとしないだろう。


そのとき、せっかく一人で幸せな空間を楽しんでいたのに、お茶会の時間が近づいてる、と、心配したショウリが呼びに来た。

しぶしぶ腰をあげたものの、どうにも面倒で、思わず、


「行かなきゃダメか?」


と、ぼやいたら。


「あたりまえですよ!カエラ様怒ったら怖いんですから……頼みますよ」


ショウリに悲痛な声で泣きつかれ、やれやれ、と城に戻ってきたところなのだ。


「とりあえずお部屋に先にもどっていてください。すぐにご案内しますから」

と、ショウリに言われ、自室を目指す。


長い廊下を歩き、突き当たりの階段へ。

ここの踊り場には、見事なステンドグラスがあり、俺のお気に入りの場所となっていた。
精巧な図案が美しく、眺めていて飽きない場所。

今日は曇っているから残念だな……と、思っていたら、雲と雲の間から太陽の光が差し込んだようで、じわじわとあたりが明るくなってきた。

光を通したステンドグラスは、これまた素晴らしい。
光の絵画とはよくいったものである。


俺は、コツコツと階段をあがりながら……ふと、人の気配を感じ、顔をあげた。


踊り場に、佇む一人の……女性か?


逆光になっているから、よくわからないが。
長いワンピースが確認できるが……



ドキン……と心臓が鳴った。


この後ろ姿……俺は知っている。
四六時中常にそばにいた最愛の人の姿。


だけど。
いるわけない。
こんなところに……


こんな……



女性が振り返った。




俺は……衝撃で声が出なかった。

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