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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


カエラの部屋までは、マリウスが案内してくれることになった。

城の二階部分が、王族の方々のプライベートな住まいなのだそうだ。

長い足で、コツコツと廊下を歩いてゆくマリウスの背中を追いかける。
どうでもいいが、この男、物腰は優雅だが、無駄話を一切しないから、少々冷たい印象をうける。


ちょっと怖いんだよなぁ……


愛想はいいのだが、蝋人形のようなやつだと思った。

昨日、立ち止まった大きな窓の前を通り抜け、突き当たりの階段をのぼる。

すると、目の前の踊り場に、大聖堂を彷彿とさせるような見事なステンドグラスが現れた。


わぁ……


思わず立ち止まる。

ここまでのものを見るのは初めてだ。
精巧な図案で埋め尽くされたガラス。
今日は、あいにく曇り空だが、晴れたら外から差し込む光でさらに美しいだろうな、と思った。

そっと手で触れて、すぐに離した。


ダメだよね。汚れちゃう。


ふっと、笑って顔をあげて……固まる。


あれ?マリウス……??


しんとした階段をかけあがって、二階の廊下に出てみたが、その後ろ姿を完全に見失った。
俺は、頭を抱えたくなる。


マジかよ?
普通、後ろついてきてるか確認しながら歩くだろうが!


「信じらんねぇ……」


ぽつりと口にだしたら、猛然と怒りがわいてきた。


あんの蝋人形、俺の国だったら、ジュンイチに、めちゃんこ怒ってもらうとこだぞ!


この場にいない生真面目な六の兄を思い浮かべ、……さて、どうしたものか、と考える。


このままここにずっと立っていたら、マリウスは探しにひき返してきてくれるだろうか。

でも、誰かに見つかったら、理由が理由だけに恥ずかしい。
ぼんやりしてたら迷子になったなんて。


せめて、踊り場に立っていようか。

俺は身を翻して階段をゆっくりとおりた。

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