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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟



次の日は、朝から曇り空だった。
つついたら、雨粒が落ちてきそうな灰色の雲に、気持ちもリンクして、どうにも気分が晴れない。

窓辺でぼんやりとしていたら、ショウリが入ってきた。


「カズナリさま、朝食です」

「ああ……ありがとう」


王族としてでも、客人としてでもない中途半端な立場の俺は、ショウリが、部屋に持ってくる食事を一人で食べてる。

だが、もともと細い食だったが、ここにきてさらに細くなり、今朝も、フルーツくらいしか食べる気にならなかった。


オレンジをもそもそかじっていたら、おはよう、と姿をみせたカエラが、俺をみるなり笑いだした。


「あのさぁ。うちのオレンジは、そんなに不味くないとおもうけど」

「はぁ……」


しかし、俺の食卓をみて、カエラは目を丸くした。
ほぼ手つかずだからだ。



「どうしたの?口にあわない?」

「いや……単に食欲がないだけで……」

「はぁ?男がなにいってんのよ」


カエラはぶつぶついいながら、野菜がたくさん挟まれたサンドイッチを手に取り、俺の口元に差し出し。


「はい、口開けて」


といってきた。
だが、新鮮な葉野菜の香りがしたものの、俺の胃は重いままで。


「いや……ごめん。ほんとにいらない」


俺が苦笑いして、再度断ると、カエラは頬をふくらませてそのサンドイッチを、ぽい。と自分の口にいれた。
もぐもぐと、これ見よがしに咀嚼するカエラに笑いがもれる。

心配の仕方が子供のようで。

こういうところ……サトコ様に似てるなぁと思う。


「食べないと体壊すわよ」

「食べてますよ」

「こんなの、食べてるって言わないわよ」


スープもサラダも手つかずなのを指差して、カエラは仁王立ちだ。
怒った顔も、心配の裏返し。
そう分かってる俺は、ふっと笑って、すみません、と一応謝った。


「じゃあさ、あとでさ、お茶会するからカズも来なよ。ケーキくらいなら食べれるでしょ」

「ケーキ……」


甘いのは得意じゃない、といったら今度こそ怒られそうだ、と思った俺は曖昧に頷いた。


「昨日の、祭りの事故、うちがかんでるみたいでさ。お詫びにって、被害者の人たちこの城に泊まってんの。そのなかに可愛い女の子がいるから誘ってみようと思って」

「へぇ……」

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