
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
「サトコ様。お夕食の前に手当てしてしまいましょう」
部屋に入ると、フミヨさんにやんわりと椅子に座ることを強いられた。
ソファに座り、包帯やらを準備しているフミヨさんを待ってる間、よくよくみたら、お気に入りのワンピースは、あちこちほつれてひどいことになってる。
裾をめくったら、裏地はさらにひどいことになってて、血や砂などで、ドロドロだ。
だけど、この程度ですんだのは、ジュンのおかげだもんな。
でも………痛いのやだな……
俺は顔をしかめながら、促されるまま足を出した。
「……そんな顔しなくても、嫌なことはしませんよ」
フミヨさんが、笑いをこらえるように、手早く洗浄していく。
いやいや、地味にいてーし!
しみるし!
口にしたい思いをこらえて、チラ、とジュンをみたら、相変わらず心配そうに俺を見てる。
………あいつの前で、痛い顔なんかできねぇか…。
だって、あいつは、俺の100万倍痛いはずだもん……。
俺は死ぬ気で微笑みをつくって、ジュンを見た。
ジュンがちょっと安心したように笑みを返してくれたのを確認して、俺は、気をまぎらわすように、フミヨさんの薄い頭を見つめた。
フミヨさんなら……カエラのこと、なんか教えてくれるかな……
ガーゼに丁寧に薬を塗ってる彼に、あの……と、思いきって切り出した。
「私をここにつれてきてくださった女性は、王族の方ですか……?」
すると、フミヨさんは事も無げに頷いた。
「そうですよ。陛下のお孫さんにあたります、カエラ様です」
「孫……?」
あれ……?
松の国に詫び状をかかなきゃって大騒ぎしてたあいつも確か……
「……最初にこちらでお会いしたリョウ様も、陛下のお孫さんっておっしゃってませんでしたか?」
「はい。お二人はご兄妹でいらっしゃいます」
フミヨさんは手際よく俺の手当てをすませて、これでよし、と言った。
俺は、お礼を言って、足をおろしながら考える。
おかしい。
……カエラが王族だとすると、なんだかおかしなことになる。
花売りの孫にすぎないミヤが、王室の人間を呼び捨てする関係にあるわけがない。
あんな真面目なやつにありない。
……やっぱり……幻聴だったのかな……
