
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
珍しい響きの名前だから、印象に残ってる。
カエラ
今……確かに、カエラって……今……!
考えていたのは数秒に満たなかっただろう。
俺は猛然とダッシュして、閉まった扉にとびついた。
そして、驚くフミヨさんを尻目に、外に走り出た。
もしも彼女が、俺が聞いたミヤの声のカエラ本人なら、何か知ってるかも……!
廊下の向こうに緑のワンピースの後ろ姿が見える。
「……カエ……」
大声をあげかけて、それを飲み込んだ。
騒ぐのは……迷惑か。
俺は、走っておいかけようと一歩踏み出しかけた。
「あ、ちょうどよかった。サトコ様」
ところが、後ろからマリウスに、運悪く呼び止められた。
焦って振り向いたら、マリウスは、ワゴンを押す別の召し使いを従えていて、その細い指でジュンのいる部屋を指差した。
「お夕食ご用意しましたが、皆様、御一緒にこちらの部屋で召し上がりますか?」
「あ……えっと……ショウはちょっと用事で出ておりまして……」
無視することもできずに、応対してるうちに……気づけばカエラの姿は見えなくなっていた。
…………
……よその城で、勝手に探しまわるわけにもいかない。
俺は唇をかんでその場をあきらめた。
まあ……この城の人間なのは間違いなさそうだし……。
また会えることを期待するしかないな。
