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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


自分が飛び出したからだ、と、詫びると、その子は、首を振り、ぴしゃりと言い切った。


「ダメよ。そこは馬車が避けるべき。人と接触なんてありえない」


うーん……けど、馬車も、急になんてとまれねえと思うぞ……。


無茶苦茶をいう彼女に心でつっこみながら、俺は苦笑いでもう一度、すみません、と謝った。


「他に怪我人の方いるんでしょ?」

「はい……さっき目覚めたところで」

「そっか……ならフミヨさん、そこにいるわよねー」


その子は、迷わずジュンのいる部屋の前で立ち止まり、コンコンと力強くノックした。

さっきのジュンとのキスを思い出して、一瞬顔が強ばってしまったが、俺がおどおどするのはおかしい、と、必死で自分に言い聞かせ、ポーカーフェイスを保つ。


はい、と小さく返事が返ってくる。


「失礼しまーす。フミヨさん、いますか?」


その子は小さく扉をあけて、隙間から声をかけた。

その小柄な医者……フミヨさんとやらが、こちらに歩いてきたタイミングで、その子は俺の手を引っ張り、部屋に押し入れた。


「この子。派手に足怪我してるからみてあげて」

「……おや、あなたもでしたか。……早く言ってくださらないと」


俺のワンピの裾を持ち上げ、傷をみたフミヨさんが眉をひそめた。


……ジュンには見せなくなかったな……、と思って顔をあげたら、奥のベッドに横たわるジュンが心配そうな顔をして、こちらを見てるのが見えた。


ほーら、バレた……


ジュンが起き上がろうとしてるのを止めようと、俺は、なんでもないから、と微笑みながら歩み寄る。


ごめん。さっき、どこも怪我してないって言ったばかりだもんな。


たいしたことないから、と口を開きかけたら、


「じゃあ、よろしくね」

「承知しました……カエラさま」


ふいに、入り口にいる二人のやりとりが耳に飛び込んできて、心臓がとまった。



カエラ



耳にのこるミヤの声は、確か。



……待って、カエラ

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