
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
Jun
参った……
俺は、いまだ感触の残る唇に、思わず指をあて、深く息を吐いた。
予想外だった。
キスが欲しい。
ダメもとでふった俺の願いに……姫が応えるなんて。
あえて目をつぶり、おどけたふりをして。
俺の願いは冗談としてさらっと流そうと思ったのに。
嘘ですよ……、そう言って目を開けようとしたと同時に、柔らかな唇が俺のに触れたのがわかった。
瞬間。
……理性という名の糸がプツンと切れた。
今まで、ずっとずっと紳士でいたのに。
自分が積み重ねてきた信用を一瞬で反故にしてしまうかもしれない……そういう簡単な発想すらできなかった。
それくらい頭が真っ白になった。
痛みの残る体を無理に動かして、姫の顔を捉えて。
驚きに目を見開いた姫の表情を無視して、貪るように口づけた。
夢中だった。
姫の唇は、とてつもなく柔らかで甘くて……それでいて熱くて。
自分が一体何をしてるかとかどうでもよくなった。
体の深いところがカッと熱くなって。
姫がもらす吐息ですら……いとおしくて切なくて……苦しかった。
そうして……ゆっくりと唇を離す。
涙目な姫の表情が目に飛び込んでくる。
繰り返す吐息と赤い濡れた唇が、さらに俺を煽る。
……でもこの先はダメだと思った。もうこれ以上はダメだと思った。
俺は、ギリギリ残っていた僅かな理性をかき集め、ぎゅっと拳を固く握り……本心から呟いた。
怪我していて良かった……
そうでなきゃ、きっと俺はあなたを押し倒していたかもしれない。
腕がジクジクいたむ。
頭がガンガンする。
体中が痛い。
胸が……痛い…………。
飛び出していった姫を見送り、滲む涙を左手で拭った。
……すみません……俺はやっぱりあなたが好きだ。
