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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


青年は、リョウと名乗った。

国王陛下の孫だという。


「僕が、窓口になりますので困ったことがあったら、僕の付き人にことづけてください」

「マリウスといいます」

リョウの後ろから、背の高い色白の男の子が現れ、ペコリと礼をしたので、こちらも慌てて頭を下げた。


「……ご挨拶が遅れました。大の国の長女、サトコにございます」

「櫻の国、皇太子ショウです」


俺たちが名乗ると、リョウが、ぽかんと目を丸くした。


「……この国の……お人ではなかったのですか……」


「はい……プライベートで三人で旅行に来ておりまして」

「ああ……もしかして薔薇祭りに?」

「そうです」


嘘も方便だ。
ショウは、さらりとその辺りを流した。


「では、お怪我されてるのは……」


リョウが、恐る恐るベッドを振り返った。


「……彼は、松の国の皇太子ジュンです」

「ええっ!」


案の定、リョウが悲鳴のような声をあげた。


「皇太子様に、お怪我をさせてしまったなんて……!すぐ松の国の王室に、詫び状を送らせます……!」

「いや……そういうつもりで言ったわけでは……!」

「マリウス!すぐに準備を!」


慌てて制したが、少々慌てん坊なのか、リョウとマリウスは、バタバタと出ていった。


その間、黙ってやりとりを見つめていた医師が、顔のシワを深くして笑みをつくった。

孫をみつめるおじいさんのような優しい瞳。

医師という職業にあるべき、安心感のある何かをこの人は持っていた。


「時々様子を診にきます。隣の部屋におりますので、もし、彼が気がついたら、教えてください」


と、柔らかな声で言い残し、一礼して出ていった。

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