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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


振り向くと、デニムのエプロンをした職人のような風情の女性が、買い物かごを持って、立っていた。

店先で騒ぐ俺らに、若干とまどうような表情を浮かべてる。

ショウがすかさず、爽やかな笑顔で、対応する。


「ああ……お騒がせしてすみません。どうしても花が欲しいんですが、こちらの店はお休みですか……?」


すると、やはりそうなのか、と、まるで自分が申し訳ないことをしたというような顔で、女性は頷いた。


「店主が、ご病気でねぇ……二ヶ月前くらい前から閉めてるんだよ……」

「そうでしたか……」

「あのっ……ここに私くらいの背の男性と、小柄な女性は来ませんでしたか?!」


ショウの相槌にかぶせるように、俺は食いついた。


この人なら何か知ってそう……!


必死の形相の俺に、その女性は面食らいながら、ええと……と、首をかしげた。



「……それは、タエさんとカズナリくんのことかしら?」

「……っ……そうです!その二人に会いに来てて……!」


女性は、そうなのね……と、頷いた。
そうして、少し顔をくもらせて、俺らをまじまじと見つめてきた。



「失礼だけど……あのお二人とお知り合いなのかしら?」

「……えっと……」


そこで初めて自分の置かれた現実に気づく。

そうか。俺は大の国から来たなんていえない。
国に内緒で来てるもの。
ショウとジュンも、プライベートなんだから身分はあかせない。


どうしよう……


口をつぐんだ俺に、ジュンが助け舟をだした。


「私の身内が昔、こちらで花束を購入したことがありまして。それをすごく綺麗に作ってくださった方が、確かそんなお名前だったと記憶してたものですから。お会いして、もう一度作っていただけないか、と……」


すらすらと、よどみなく出てくる言葉に、なんだか感動してしまった。


そんな嘘八百よく即興ででてくるな……。


俺が目を真ん丸にしてると、ジュンは片頬だけあげて笑ってみせた。

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