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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「カーズー!なによ、つまんない顔しちゃって。暇ならお茶付き合ってよ」


突然、ノックもなしに扉があいたと思ったら、派手な格好をした女の子が、ずかずか入り込んできた。
真っ赤な膝丈のワンピースに、ヒールという、じい様たちが見たら卒倒しそうな出で立ちで、仁王立ちしている彼女は、俺のいとこだという。

唐突なお誘いに、俺は苦笑いして応対した。


「別に暇では……」

「うっそ。することないんでしょ?」


タクヤさまの弟には、二人の男女の子供がいらっしゃる。
そのうちの一人で、名はカエラ。

年は、俺より大分下のはずだ。
すっごい、タメ口だけど。


「城下町。行ってみる?」

「いえ……遠慮します」

「……つまんないのー」


大きな口元をぷっと尖らす。

計算のない自然体な振る舞いの彼女は、よくも悪くも破天荒。
いきなり現れたタクヤさまの子供、つまり俺に、城の人間は、腫れ物を扱うような応対しかできないなか、カエラは初対面から、遠慮はなかった。

……それがかえって気持ちよかった。


『……イケメンね、あなた!……でもなんだか暗いのが残念』

などと言われ。


『カズナリって呼びにくいから、カズって呼ぶわ』


と、サトコさましか呼ばれたことのない名前で呼ばれ。


複雑な気持ちでこの城にとどまっている俺に、いい意味で、気分をかえてくれる存在ではあった。


カエラは、颯爽と傍に近づいてきて、俺の横に立った。

短く切り揃えられたショートの髪が、頭の小さな彼女によく似合ってる。
ヒールをはいて、サトコさまと同じくらいの背格好だな、と思った。

さらには。
サトコさまはシトラス系の香りをつけていらしたが、カエラはフローラルな香りが好きなんだな、とか。

ことあるごとに、サトコさまを引き合いに出しては、思い出してる自分に気づく。

俺も相当寂しいらしい……。


……ふと、カエラの口調がからかうものに変わった。


「……今、女の事考えてたでしょう?」


カエラが大きな目をくるんと瞬かせ、興味深そうに体をのりだしてきた。
この距離感は、身内のものなのだろうけど。


「……ちょっと……近すぎます」


やんわりとその体を押し戻した。


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