
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
俺の幼い記憶では、ニノ国の悪い印象はない。
おばあさまのお側で、花売りのお手伝いをして楽しかった、温かい記憶が朧気にあるだけだ。
でも、タクヤさまの様子をみるかぎり、母さんには、当事、相当風当たりが強かったことが想像できた。
国を追われるくらいだから、よっぽどだったのだろうな……。
小さな俺を抱えて。
おばあさまのもとを離れて、頼る人もいなくて、母さんはどんなにか不安だったことだろう。
大の国の人たちがよい方々で、本当に良かった、と思う。
俺は、静かに立ち上がり、大きな窓に歩み寄った。
大の国の庭は、広大な敷地に、計算され配置された木々やオブジェなどがあり、まるで、ひとつの絵画のような美しさがある。
対してここニノ国は、様々な木々や花が咲き乱れ、自然と一体化したような風景が広がっていた。
遠くに見えるのは、バラ園だろうか。
あとで歩いてみようかな……と、思った。
基本、城から外に黙って出ることさえしなければ、自由に過ごしていいと言われてる。
庭に行こうが、城内を散策しようが咎められることはない。
でもこれじゃ、まるで籠の鳥だ。
自由なようで自由じゃない。
タクヤさまが、国王陛下に母さんのことを話す間だけ、という条件で連れてこられたものの。
サトコさま……寂しがっているだろうな。
俺は、口をへの字に引き結んで、泣くのを我慢する意地っ張りな姫様を思い浮かべた。
今回、お側を離れる理由が理由だっただけに、気をつけて、としか言われてないけれど。
俺には分かる………寂しいって全身で訴えてた。
