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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟

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「お茶のおかわりいかがですか」


ショウリの声に我にかえる。
カップをみたら空っぽで。

ティーポットを持ってニコニコしてるショウリに、俺はありがとうと頷いて、カップを差し出した。


今度は、聞くタイミングは上出来だな。


コポコポと静かに二杯目のお茶を注ぎ、俺に差し出すと、

「ちょっと失礼します」

と、ショウリが部屋を出ていった。
その小柄な後ろ姿を目で追いかけ、俺はため息をついて天を仰いだ。



………王子なんて柄じゃないのにな……。


着てる服や、周りからの扱いに、違和感しかなくて、時折大声をあげて否定したくなる。


それでも我慢してるのは、ひとえに母さんのためだ。


……タクヤさまは、このニノ国の時期国王となる皇太子であった。


……皇太子さま……?え、なんで母さんと……?


驚く俺に、母さんは恥ずかしそうに若い頃の話をしてくれた。


自分が、城に花を生けにでかけたときに、帰りに城内で迷ってしまい、そこでであったのがタクヤさまであった。

タクヤさまの完全な一目惚れで、猛アタックのかいあり、ようやく母さんが振り向いて。

だが、それを、若いから故の皇太子の火遊びと、黙認していた側近の重鎮たちが、二人の間に子供……つまり俺ができたことで、態度が一変したという。


身分のつりあわない女など、皇太子の相手にはそぐわない、ということだが。


……まぁ当たり前な話だな。


あの手この手で、別れるように仕向けられ、最後にはこの国を追われるように、母さんと俺は大の国へ出された。


親子二人ででも、食べていけるように、と、せめてもの計らいで、大の国のお妃さまであるヨシノ様つきの召し使いになれたのは、タクヤさまの力によるものだったらしい。

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